HE IS A PET.


 病院へ行く前に、一度自分のマンションに帰らなくてはいけない。

 おじーちゃんのお通夜で会った平林先生の甥、『守田敬一』さんの名刺。あれが要る。無礼にも、葬祭用のハンドバッグの中に入れたままだったと思い出した。


 そして、平林家の相関図を復習しておこう。

 平林のおじーちゃんと亡き奥さんの間には、息子が二人。長男の息子が、敬一さんだ。
 長男は二十年前に離婚して、敬一さんは母親に引き取られた。
 そして母親は十三年前に再婚して、守田姓になった、と。

 だから守田さんは、おじーちゃんの孫ではあるけれど、平林家の人間ではないのだ。

 守田さんが十年前から住んでいる神戸の一戸建てはおじーちゃん名義で、守田さんとおじーちゃんの間には、使用貸借が取り交わされていたとみなされる。

 おじーちゃんが亡くなり、今後どうするかの話し合いを、何故か私が取り持つことに、なりそうなのだ。




 マンションに帰ってすぐ、玄関の異変に気付いた。

 怜?

 怜の通学用の、今朝も履いて行ったはずのスニーカーがある。


 そして、こっちは?

 ペタンと履き潰されたようなローファーが並んでいる。デザインもサイズも、ガールズ。
 学校の友達? しかも女の子……?



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