HE IS A PET.
「怜、帰ってるの?」
咄嗟に想像した最悪な状況を目の当たりにする。
ベッドの上にいる二人が、何をしているのかなんて一目瞭然だった。
肘を着き、上体を少し浮かせた体勢でベッドに寝そべっている怜の下腹部に、顔を埋めている女の子。
四つん這いになっているため、短いスカートの中身はこっちから丸見えだ。
「何してんの、人んちで」
女の子がガバッと上体を起こし、振り向いた。
そんな彼女越しに、唖然とした顔で固まっている怜と目が合う。
「学校さぼってセックス? 親が知ったら泣くよ。怜って、バカなの?」
親との約束、大事だって言ってたのに。こんな風に裏切るなんて。
「ここに女を、男も、連れ込むなって。言ったのも、忘れた?」
怜は頭を横に振って、唇を微かに動かした。言い訳をしたいけれど、声にならないといった感じだ。
「うち、ホテルじゃないの。ヤるなら他でヤって」
有無を言わせない口調で、玄関を差し示した。
下手な言い訳なんてさせない。聞くだけ腹立たしいに決まってる。
固まっている怜から、女の子が離れた。そう乱れてもいなかった着衣を整えて彼女は、
「芦沢くん、ごめんね」
呟くように怜に謝り、床に放っていた紺色のスクールバッグを拾い上げると、私に頭を下げ、そそくさと出て行った。