HE IS A PET.
「ごめん……なさい」
消え入りそうな声で謝り、簡易ベッドから下りようとした怜の身体に足を伸ばした。
学生シャツ越しの腹筋を、ぐっと踏みつける。
薄茶色の瞳が、さっと狼狽する。
それでも無抵抗に、私がかける体重を受け入れる。絶対服従を示すように。
踏んでいる足の爪先で、つうっと撫で下ろしていくと、唯一抵抗を示している箇所に気づく。
「……何これ。罵られて、踏まれて、感じちゃったの?」
ぐにぐにと踏みつけると、足裏に返ってくる反発力が増してくる。
「それともさっきの消化不良? 追いかけてって、続きしてもらう? 足でも気持ちいいとか、変態だね」
ピンと伸ばした足の先で擦り上げると、細い腰がピクンと跳ねた。
「……やっ」
押さえきれないほどに増幅する嫌悪感、苛立ち、背徳感――興奮。
嫌だと言いながら硬度を増していく怜の身体に、張り詰めていく表情の切なさに、背筋を這うような興奮を覚える。
そんな私の暴走を止めたのは、スマホの着信音だった。
「はい、倉橋です」
足の動きを止め、電話に出る。
「ああ、倉橋さん。平林です。今日のお約束なんだけど、急な予定が入っちゃって。申し訳ないんだけど、明日にしてもらって構わないかしら」
「ああ、はい。では明日……閉院後にお伺いして宜しいですか? 日中は予定がありまして」
「ええ。それでお願い。ごめんなさいね」
電話を切り、じっと会話を聞いていた怜の身体から足を下ろす。
「時間できたから、送ってってあげる」