HE IS A PET.
ベッド脇にあったショルダーバッグを手に取り、
「リュックも持って来て」
戸惑う怜に命令を下す。
「早くして。出るよ」
怜はリュックを取って来ると、あたふたと私の後に従った。
エレベーターで駐車場に下り、車を発進させてから十分ほど経ってようやく怜が遠慮がちに口を開いた。
「あの、送るって、どこに……」
「アズミンのマンション」
顔を見ると言えそうにない言葉を、真っ直ぐ前を向いたまま率直に伝える。
「もう無理。怜と過ごせない。今日明日の二日くらいは、一人でも待てるよね? 荷物は後で送るし、真崎さんにも連絡しとく」
「俺が、同居のルール破ったから?」
暗い声色で怜が尋ねる。
「……そだね」
アズミンのマンションに送り届け、手短に別れの挨拶を述べた。
「じゃあね、怜。元気でね。明日はちゃんと学校行くんだよ。ご飯もちゃんと食べて。なかったら、買うなり食べにいくなりしなきゃ駄目だよ」
財布から五万抜き取って、怜に差し出した。怜を預かった日に、経費として貰ったお金の残りだ。
怜は黙って紙幣を見つめたまま、唇を噛んだ。
「ごめんね、最後まで面倒見れなくて」
悲痛な表情を見て、やっぱり胸が痛む。
こんな見切り方は酷いと分かっているけれど、これ以上怜と一緒にいるのは辛い。
「困ったことがあったら、真崎さんに電話するんだよ」
怜は顔を上げて、いつものすがるような目で見た。
「……俺のこと、もう嫌い? どうしようもない犬で、汚い身体だから」