HE IS A PET.
Hickey
翌朝、怜は私より早く起きていて、朝食を作ってくれていた。
トーストに目玉焼きに、サラダに野菜スープ。
初めてうちに来た日の翌朝を思い出す。
あの時のトーストは焦げていたし、目玉焼きは潰れていたけれど、今日のは上出来だ。しかも野菜スープまでついている。
「すごいじゃん、怜。料理スキル、アップしてる」
誉めると、怜は嬉しそうに笑った。
「でしょ。カレーも作れるようになったよ」
「へぇすごい、今度作って」
「うん」
案外器用な怜は、やればできる子なんだろう。
アズミンが何でも完璧にできるから、怜がする必要性がなかっただけで。
アズミンは意外に完璧主義者だ。だらしない喋り方のせいでゆるい人間に見られがちだけれど、妥協は絶対しない。料理も調理師免許を持つ腕前だし、美容にいい食材がどうだのと煩い。
でも男の趣味が悪い。
だから、私はアズミンのことが嫌いだ。
何事もなかったかのように振る舞う怜の、痛々しいキスマークが目については苦々しい気持ちになる。
「ご飯食べて終わったら、アズミンに電話するから」
「……何て言うの?」
強ばった瞳が、不安げに私を窺う。
「怜、うちに来てるって。しばらく預かるって。言っとかないと心配するでしょ。てか、もうしてるだろうし」
すればいい。うんと心配して、気づけばいいんだ。
エリックなんかより、怜が大事だって。
「してないと思う。電話もないし」
怜はポツリとそう答え、淋しげな微笑を浮かべた。