HE IS A PET.
「そんなに良かったの?」
怜を脱がせて、良いことなんか一つもなかった。
答えない私に、新しい質問が重ねられる。
「しばらくってどのくらい?」
身体の痕が消えるまで、うちにいたいと怜は言う。
首に鬱血が二つ、手首に圧迫痕が二つ、肩に歯形が一つ。目立たなくなるまで、どのくらいかかるだろう。
「五日くらい?」
アズミンが無表情で怜に手を伸ばす。
シャンパンゴールドの爪で怜の顎を上に向かせ、険しく眉を寄せた。
「いいわよ。でも痕はつけないでちょうだい。この子、一応モデルだから」
私がつけたキスマークをなぞり、その感触に耐える怜を観察するアズミンは、ひどく冷静だった。
「まあ、この程度ならコンシーラーで隠せるわね」
「もっと怒ってよ」
怜が淋しそうだから。
怜に節操がないのは、アズミンに独占してもらえない淋しさによるものじゃないかと思う。
「怒ってるわよー。無断外泊して、派手なキスマークつけて。今日、撮影日だって言ってあったでしょう? 遊び気分でモデルやってんなら、クビにするわよ」