HE IS A PET.


「怜を叱らないで。怒ればって言ったのは、私を。手酷く扱って傷つけたんだよ。撮影のためじゃなくって、怜のために怒ってよ」

 怜が誰のために誰を庇っているのか。気づかないなんて、飼い主失格だ。

「咲希ったら、どーしちゃったのー? 怒ってほしいなんて、ドMみたいにおねだりしちゃって。らしくないんじゃなぁい」

 優しい嘲笑を浮かべるアズミンの、どこまでも余裕を保った態度が癪に障る。

「ドMだよ」

「あら、どっちかって言うとSでしょぉ?」

 怜を押し倒して裸に剥くまでは、確かにサディスティックな興奮を覚えた。

 だけど残されていた暴行の痕跡を見て、そんな気持ちは瞬時に萎えた。
 つけられたばかりの生々しい傷をえぐりたいと思うような嗜好は、私にはなかった。

「ドMが怜にハマるわけないもの。怜だって満足しないわよー、苛めてくれる相手じゃないと。抱いてみて分かったでしょ。可愛い顔して、とんだ淫乱だって」


「アズミ」

 怜が顔を上げ、泣き出しそうな瞳で飼い主を見た。

「誤解しないで。咲希さんは何もしてない。俺のこと、庇ってくれてるだけ。これは昨日……街ん中で、女の人に声かけられて……ついてって。ホテルで……された跡」


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