HE IS A PET.



「何で、あんな嘘ついたの」

 中断していた食後の片付けを再開し、黙々と洗い物をしている怜に尋ねた。

「嘘じゃないよ」

「嘘。これ、女につけられたんじゃないでしょ」

 捲り上げられたトレーナーの袖口から見える、怜の両手首の痣。強い力で握られた跡だ。

 スポンジを扱う手首をきゅっと握ると、怜が身体を強ばらせたのが分かった。



「エリックにやられたんでしょ?」


「ちがっ……ナンパされて、男に」


「嘘つかないで、言って本当のこと。こんな酷いことする男だって、アズミンの為にもちゃんと言わなきゃ駄目だよ」

 ぬるま湯を出し、掴んだ手首を誘導する。手についた泡を流させ、スポンジとお皿を取り上げシンクに置いた。


「怜。こっち見て、答えて」

 怜は臆病で、目を見て嘘はつけない。


「……でも、アズミには優しいから」

 強引に捉えた瞳は、居心地が悪そうに逃げた。


「俺が大人しく服従してたら、アズミにはいい恋人でいるって……実際、アズミには優しいし。アズミも……幸せそうだから。それ、壊したくない」

 心臓がドクリと鳴った。血が逆流しそうだ。



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