HE IS A PET.
Money
翌朝も怜は私より早く起きていて、二日目のカレーを温めていた。
カレー臭が充満したキッチンで、神妙な顔つきで鍋をかき回している怜は、見慣れぬ紺色のエプロンを身につけている。
「おはよ。どーしたの、そのエプロン。似合いすぎて可笑しい」
「……変?」
怜は自分を見下ろして、それから私を見て、困ったように笑った。
「変じゃないよ。似合いすぎて可笑しいだけ」
「可笑しくても、大丈夫?」
「大丈夫。似合ってるよ」
誉めると嬉しそうに、はにかんで笑った。
昨日肌を重ねた怜は別人みたいだったから、今日どう接していいのか分からなくて。不安で、内心びくついていたけれど。
特に今までと変わった点はないみたいだ。
「咲希さん、朝からカレー食べられる? お昼にカレーうどんか、カレーコロッケにして食べるってのも有りかな」
なんて無邪気な提案をしてくる怜に、セックスに手慣れた男の面影はない。
昨日の出来事は夢だったように思えてくる。