HE IS A PET.
何の五万?
ベッドインした翌朝に現金を渡されるという状況に激しく動揺していると、
「アズミから。スーツケースの中に入ってた」
怜がさらりと補足した。
「咲希さんに渡してって、メモに。通学費とか、俺にかかる費用五日分って。買い物は俺が持ってるカード使えばいいって」
五日で五万を「足りる?」と訊かれて、怜にかかる費用を思い出す。
学校までの往復のタクシー代で、毎日九千円弱かかる。
私には到底払い続けられない金額だ。
「学校には、電車で行くから……ごめん」
私の顔色を窺いながら、怜が謝った。
私が飼い主なら、当然そうしてもらうしかない。不便で可哀想だといって、甘やかせられない。
アズミンが飼い主だから、過保護にできるのだ。
そもそもアズミンのマンションからなら、通学に不便はない。交通費は十分の一以下だろう。
怜がうちから学校に通い続けるとなると、誰かの負担になることは免れない。
「あー……何だったら、私が出勤前に送る。帰りは迎えに行けないけど」