HE IS A PET.

 怜はブンブンと首を横に振って、私の申し出を固辞した。


「そんなのいい、全然大丈夫だから。電車好きだし、歩くのも好きだし」

 そう言った怜の視線は、私が持っている白い封筒に落ちた。


「……出来るだけ、迷惑かけたくないし」


 それは、私にというだけではなく、アズミンにもという意味に取れた。







「へぇ~あの子、よっぽどいい仕事してるのねぇ」


 突き返した封筒を見て、アズミンは厭らしい含み笑いを返した。


「見てみたいんだけど、駄目ぇ?」


「何を?」


「あの子が普通に女抱いてるとこ。想像できないわぁ、どんなセックスしてんのぉ?」

 シガレットケースに手を伸ばしたアズミンは、取り出したチョコレート色の煙草に火を点けた。


「あら、黙秘する気ぃ? ケチぃ。教えてくれてもいーじゃない。それとも何。まだヤってないの?」


 お金を返したらさっさと帰ろうと思ってたのに、ただでは帰してくれそうにない。

 はぐらかしてもしつこそうだし、私がしらばっくれたところで怜が簡単に口を割りそうだ。


「頂きました。美味しゅうございました。ありがとうございました」


 居直り万歳。

 手を合わせソファーに座ったままお辞儀をすると、アズミンが深く息を吐く音が聞こえた。


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