HE IS A PET.


 続けて、トントンとドアをノックする音が聞こえた。


「失礼します」

 固い声色で入室して来たのは『AZMIX』の事務員、山田女史だった。

 表向き、客として来ている私にコーヒーを出すことも彼女の仕事の一環らしい。
 オフィスになっている隣室では、真崎さんがパソコンと睨めっこ中だ。

 社員たちが真面目に勤務している最中、社長と下世話な話をしていることが忍びない。


「怜が美味しいのは知ってるわよ、若いんだものー。で上手いの下手なの、どっち?」

 カタリ、と無機質な音を立ててコーヒーカップとソーサーが置かれた。山田さんの迫力ある無表情が怖い。


「上手いよ」

 どんな反応をされるかと思ったら、予想通り。
 アズミンは愉しそうに笑い、山田さんは無表情のまま出て行った。


「それは光栄だわぁ、飼い主として。でも、あたしが仕込んだんじゃないから、自慢になんないかしら」

 ふう~と吐き出された煙草の煙が煙くて、思わず眉をしかめた。


「怜はねぇ、前の飼い主に調教されたのよ。身体に教え込まれた快楽ってのは、なかなか抜けないみたいねぇ。麻薬みたいに」


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