あなたの大切なひと
竹本は、怒った顔をしていた。
「うちの人事もえぐいことするよな。仙崎さんを異動させるなんて。おまけに深田もだぜ」

怒りのあまり、言葉遣いも乱暴だ。

深田くんという、若いけど真面目でやる気のある男子もまた、部門違いのところへ異動と内示されていた。

私もびっくりした。
庶務課みたいな部門は、もといた会社でもいたことがなかったし、なんでまた?という気持ちが強かった。

何よりも、もう竹本と毎日一緒にいられないんだということが悲しかった。
今度行く庶務課は、建物も違うからたまにしか竹本の姿を見ることはできない。

いや、月に一度見かけられればいい方か。

なんにせよ、婚約者のいる竹本を思っていることに罪悪感もあった。
だから、ちょうどいいのか。

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