嘘から始まる運命の恋
プロローグ 過ちの朝
なんだろう。
すごくあったかくて幸せな気分。
頭の先からつま先まで、全身全霊、心の奥底まで満たされたような。
こんな気持ちで目覚めるなんて幸せ。
ふわふわとしたまどろみの中、そんなことを考える。どうしようもなく笑みが込み上げてきて、口もとを緩めながらゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした視界に映るのは、ライトグレーの壁だ。ところどころ、規則的に小さな穴が空いている。
なんだっけ、これ。
もやがかかってるみたいでなかなか回転しない頭を、どうにか働かせる。
ああ、そうそう。ここって防音室よね。ピアノとかドラムとか楽器を演奏するときに音量を気にしないで済む部屋。
視線を横に動かすと、案の定、アップライトピアノが見えた。壁際に置かれたそれは、鍵盤蓋は開けっ放しで、鍵盤や椅子、床の上に楽譜が散らばっている。
ダメじゃないの、ちゃんと片付けないと。楽譜をほったらかしにしたのは誰よ。
そう思って起き上がろうと体の下になっている右腕に力を入れたら、うしろからギュウッと抱きしめられた。
「もう少し、このままで……」
すごくあったかくて幸せな気分。
頭の先からつま先まで、全身全霊、心の奥底まで満たされたような。
こんな気持ちで目覚めるなんて幸せ。
ふわふわとしたまどろみの中、そんなことを考える。どうしようもなく笑みが込み上げてきて、口もとを緩めながらゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした視界に映るのは、ライトグレーの壁だ。ところどころ、規則的に小さな穴が空いている。
なんだっけ、これ。
もやがかかってるみたいでなかなか回転しない頭を、どうにか働かせる。
ああ、そうそう。ここって防音室よね。ピアノとかドラムとか楽器を演奏するときに音量を気にしないで済む部屋。
視線を横に動かすと、案の定、アップライトピアノが見えた。壁際に置かれたそれは、鍵盤蓋は開けっ放しで、鍵盤や椅子、床の上に楽譜が散らばっている。
ダメじゃないの、ちゃんと片付けないと。楽譜をほったらかしにしたのは誰よ。
そう思って起き上がろうと体の下になっている右腕に力を入れたら、うしろからギュウッと抱きしめられた。
「もう少し、このままで……」
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