嘘から始まる運命の恋
 会う場所がホテルじゃなくてよかった。とりあえずそのことだけにはホッとする。

「快のことは呼び捨てにしてね。くれぐれも〝長岡さん〟とか〝快くん〟とか呼ばないでよ」
「わかった」
「それから、お姉ちゃん、カラーリングしよう」
「は?」
「私がいつも使ってるカラーリング剤のストックがあるから」

 真由里の言葉に私は即座に首を振る。

「あのミルクティブラウンは絶対にダメ!」
「なんで?」
「仕事上、都合が悪いの。それにスーツに似合わない。なにより私、カラーリングは美容院でするって決めてるの」
「そうなんだ……。でも、ねぇ」

 真由里が不満そうに私の髪をじぃっと見た。

 まあ、たしかに髪の色が違いすぎるとバレる確率は高くなるよね……。

 私は何度目かわからないため息を呑み込んだ。

「わかった。明日美容院で少し明るくしてもらってから行く」
「うん。メイクは私がしてあげるね。絶対バレないようにするから!」

 それは頼もしいことで。
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