嘘から始まる運命の恋
 とはいえ、さすがに妹のフリをして別れ話をするのは緊張してしまう。妹の体目当ての男でも、やっぱりまずは顔で妹を選んだはずだから。

 そう思うと、グラスを持つ手につい力が入ってしまった。ゴクゴクと半分ほどカクテルを飲んだら、頭がぼうっとして緊張を感じなくなってきた。

 それにしても、相手の男はまだ現れない。

 まさか私が真由里じゃないって気づいたとか?

 あわてて椅子から伸び上がるようにしてライブハウス内を見回した。さっきよりも客が増えて、ほぼ満席状態だが、いるのはカップルとグループ客ばかりだ。ひとりで来ているのは私だけみたい。

 遅いなぁ。快って男、時間にもルーズなのかな。ライブ、始まっちゃうじゃないの。

 頬を膨らませてブレスウォッチを見たとき、客席が暗くなった。直後、ステージにスポットライトが当てられ、すでにスタンバイしていたバンドのメンバーがライトの明かりに照らし出された。

 もうライブが始まるみたい。
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