嘘から始まる運命の恋
 しまった。油断して、素の自分で語っちゃった。真由里が熱くなるのはメイクとファッションのことなのに。

「あ、あはは、なんちゃって」

 笑ってごまかしたけど、ケイは表情を変えずに言う。

「今から弾いてみる?」
「え?」

 意味がわからなくて瞬きをする私に、ケイが口もとを緩めて言う。

「そんなに弾きたいなら、今から弾いてみようか」
「ど、どこで?」

 私は店内をキョロキョロと見た。どう見ても普通の居酒屋で、ピアノなんて置いてない。

 そんな私を見て、ケイが楽しそうに声を上げて笑った。

「や、そうじゃなくてね、俺の伯父の楽器店兼音楽教室が近くにあるから、そこで弾いてみないかってこと」
「なんだぁ、それならそうと言ってよ。私、ここにピアノがあるのかと思って探しちゃったじゃない。なんか恥ずかしー」

 照れ隠しに笑う私に、ケイが真顔になった。

「マユと一緒に演奏してみたいんだ」
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