嘘から始まる運命の恋
 甘ささえ感じさせる低い声で言われて、心臓が跳ねた。くっきりした二重の鳶色の目でじっと見つめられて、どんどん鼓動が速くなる。

 ああ。

 思わず納得してしまう。

 こんなふうに見つめられて、特別な言葉をかけられて、真由里も彼に落ちたんだろう。惚れっぽい真由里でなくても、こんなにも胸が高鳴ってしまうくらいなんだから。

 ケイとふたりきりになるなんて絶対に危険だよ。

 頭の中で理性が警鐘を鳴らした。

 でも、でも。

 彼と一緒に演奏してみたい。プロ並みに腕のいい人とセッションできる機会なんて、これから先、あるかどうかわからない。

 私は速まりっぱなしの鼓動をなだめようと、わざと冷めた声を出す。

「趣味程度だから期待しないでよ」
「俺だって酔ってるし、まともには吹けないよ」

 ケイが笑って言った。屈託のない笑顔に心がほぐされて、素直になる。

「でも、ケイの演奏、また聴いてみたいって思ってたから、一緒に演奏できたら光栄」
「よし、そうと決まったら、さっそく行こう」
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