嘘から始まる運命の恋
ケイが足もとの荷物入れからアルトサックスのケースを取って肩にかけた。そして左手で私の右手を取る。なんで、と思って、また納得する。
だって、私は真由里だから。ケイは私のことを真由里だと思ってる。ベッドルームの淡い明かりの中でしか会わない真由里と、居酒屋の明るいライトの下にいる真由奈との区別がつかないくらい、体目当ての軽い男。
一瞬頭をよぎった黒い感情。これはなに?
ケイに幻滅してる? それとも……真由里じゃないって気づいてほしいと思ってる?
「どうした?」
ケイが促すように私の手を引っ張った。私は椅子から立ち上がる。
「ケイは……どうして……」
真由里のことを好きになったの、と訊きかけて、言い直す。
「私のことを好きになったの?」
ケイは右手を顎にあてて考える仕草をしてから、私を見る。
「じゃあ、マユはどうして俺のことを好きになったんだ?」
だって、私は真由里だから。ケイは私のことを真由里だと思ってる。ベッドルームの淡い明かりの中でしか会わない真由里と、居酒屋の明るいライトの下にいる真由奈との区別がつかないくらい、体目当ての軽い男。
一瞬頭をよぎった黒い感情。これはなに?
ケイに幻滅してる? それとも……真由里じゃないって気づいてほしいと思ってる?
「どうした?」
ケイが促すように私の手を引っ張った。私は椅子から立ち上がる。
「ケイは……どうして……」
真由里のことを好きになったの、と訊きかけて、言い直す。
「私のことを好きになったの?」
ケイは右手を顎にあてて考える仕草をしてから、私を見る。
「じゃあ、マユはどうして俺のことを好きになったんだ?」