嘘から始まる運命の恋
 訊かれて答えに詰まった。真由里は声をかけられて、『イケてる』と思ったから一緒に食事をして、そのまま寝たって言っていた。

 だけど、そんなこと言えるわけない。マユとしては言いたくない。

 答えられずにいる私に、ケイが軽く肩をすくめて言う。

「正直言うと、過去の気持ちには興味ない。今はマユのことをもっと知りたいと思ってるから」

 その言葉にドキンとした。

 ケイが真由里の――私の――体以外のことに興味を持ってくれたんだ。

 そう思うと、胸が熱くなる。

 だって、私も、会ってほんの数時間なのに、ケイのことをもっと知りたいって思ってたから。

「奇遇だね。私もそう思ってたとこ」
「俺たち、意外と気が合いそうだね」

 ケイが言って、私の手を引いたまま歩き出した。ケイが会計をするときに手を離す。

 店を出たらまたつないでくれるかな。

 そんなことを思っている間に、彼が会計を済ませてくれた。店を出て、私は財布から千円札を数枚抜き出し、彼の手に押しつけた。
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