嘘から始まる運命の恋
「お釣りはいいよ。私の方がたくさん飲んだから」

 ケイが戸惑ったように手のひらを開いたまま問う。

「マユはいつも割り勘なの?」
「だいたいは。それに今回はライブのチケットをもらったし」

 そりゃもちろん、付き合っていた彼氏におごってもらったことはある。けれど、今は私も働いているし、それになにより、ケイとは対等な関係でいたい。なにもかもおごられて代わりに体を差し出す、そんな関係はイヤなのだ。真由里にとっても……今ここにいる真由奈にとっても。

「わかった。じゃ、ありがとう。遠慮なく」

 ケイが言ってお札をジャケットの胸ポケットの財布に入れた。

「伯父の店はこっち」

 そうしてまた私の手を握って歩き出す。恋人つなぎじゃない、ただ手を握っただけのぎこちない距離感。それがこれからお互いを知っていきたいと言ってくれているようで、自然と頬が緩んでしまう。ドキドキするのにくすぐったい、不思議な気分だった。 
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