嘘から始まる運命の恋
私の言葉にケイが「秘密だよ」と笑った。
「鍵をもらっているくらいだし、ホントは伯父さんの了解を得てるんでしょ?」
「実はそう。電車の時間もあるだろうし、マユは飽きたらいつでも帰っていいよ」
飽きることなんてあるんだろうか。あんな演奏をできるケイと一緒にピアノを弾けるなんて、夢みたいだと思っているのに。
ケイが防音室のドアを開けた。そこは六畳ほどの部屋で、奥の壁際にアップライトピアノが置かれていて、手前にふたりがけのソファがある。
「荷物はソファの上でも、ピアノの横のサイドテーブルでも、好きなところに置いて」
ケイはそう言ってジャケットを脱ぎ、ソファの背もたれにかけた。ワイシャツの袖のボタンをはずして折り返しながら、サイドテーブルに近づく。
「たしかシュウイチが楽譜を置いてたはずなんだ……」
ケイがサイドテーブルの真ん中に積まれた紙の束を引っかき回して、何枚か抜き出した。
「あったあった。これ」
差し出されたのは、ケイズ・ジャズ・クインテットがライブで最初に演奏した曲だ。
「鍵をもらっているくらいだし、ホントは伯父さんの了解を得てるんでしょ?」
「実はそう。電車の時間もあるだろうし、マユは飽きたらいつでも帰っていいよ」
飽きることなんてあるんだろうか。あんな演奏をできるケイと一緒にピアノを弾けるなんて、夢みたいだと思っているのに。
ケイが防音室のドアを開けた。そこは六畳ほどの部屋で、奥の壁際にアップライトピアノが置かれていて、手前にふたりがけのソファがある。
「荷物はソファの上でも、ピアノの横のサイドテーブルでも、好きなところに置いて」
ケイはそう言ってジャケットを脱ぎ、ソファの背もたれにかけた。ワイシャツの袖のボタンをはずして折り返しながら、サイドテーブルに近づく。
「たしかシュウイチが楽譜を置いてたはずなんだ……」
ケイがサイドテーブルの真ん中に積まれた紙の束を引っかき回して、何枚か抜き出した。
「あったあった。これ」
差し出されたのは、ケイズ・ジャズ・クインテットがライブで最初に演奏した曲だ。