嘘から始まる運命の恋
「うん、オッケー」
「それじゃ、マユ・アンド・ケイのシークレットライブの始まりだ!」

 ケイがおどけた口調で言った。

 私は大きく息を吸って最初の音を鳴らした。譜面に導かれて、どんどん指が動く。始まって数フレーズはピアノのソロ。ドラムソロの代わりに、左手でリズムを刻む。途中で呼吸を合わせるようにしながら、ケイのサックスがメロディを奏で始めた。ときに一緒にメロディラインを演奏し、ときに呼び合うように音を鳴らす。

 楽しい。

 すごく楽しい。

 うまい人と演奏ができるというのは、それだけでもうれしいし、幸せなことだ。でも、ケイとは初めてのセッションだというのに、息はぴったりだ。

 ライブを聴いていたからかな。

 曲が盛り上がったままエンディングに突入し、最後の音を弾くと同時にケイと視線を合わせ、演奏を終えた。

「気持ちいいなっ」

 ケイが楽しそうに笑った。

「うん、最高!」

 楽しい気分そのままに私も笑う。
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