嘘から始まる運命の恋

　この曲が、こんなにも胸が焦げるような仕上がりになるなんて。大学の卒業ライブでこの曲を演奏したときは、もっと明るく弾いた。だって、聴きに来てくれた彼との未来を歌ったつもりだったから。でも、悲しいかな、そう思っていたのは私だけで、ライブが終わった後、彼にさよならを言われたんだ……。

『俺、地元で就職するんだ。マユと遠距離恋愛をする自信がないから、別れよう』

　私は会いに行くつもりだった。あのときはまだ彼との結婚を考えていたわけじゃなかったけれど、遠距離でもいいから彼との関係を続けたかったのだ。けれど、彼は『自信がない』と繰り返して卒業と同時に地元に帰り、私の気持ちを置き去りにした。

　こんなことなら彼の地元で就職先を探したらよかった？　でも、彼に来てほしいと言われたわけでも、将来を約束したわけでもなかったのだから、そんな重い女みたいなことできなかった。

　三年以上前のことなのに、この曲は――ケイのサックスの音色は――私を悲しい気持ちにさせる。

　演奏が終わったときには、当時の気持ちを思い出してしまったせいで、すんと鼻を鳴らしてしまった。