嘘から始まる運命の恋
「ケイのことしか……考えられないよ」
「ホントに?」

 まっすぐ見つめられて、答えに躊躇する。なぜ私がケイに会うことになったのか。その理由を刹那、思い出したからだ。

 でも、今、私が本当だと言えるのは、ケイと時間を過ごしていくうちに、私の中で彼の存在が大きくなっていったってこと……。

「その気持ちは……嘘なんかじゃないよ」
「じゃあ、俺にマユのことをもっと教えてくれないか」
「私も、ケイのこと、もっと知りたい」

 そう言った私の唇に、彼の唇がそっと触れた。けれど、それはすぐに離れる。

「俺でいい?」
「ケイがいい」

 直後、彼の唇が私の唇に押しつけられた。それはさっきの探るようなキスではなくて、押し当てるように強い口づけ。彼の名前を呼ぼうと小さく開いた唇の間から、彼の舌が侵入してくる。歯列をなぞられ、舌を絡め取られ、私はまっすぐ座っていられなくなって、右手で彼のシャツを掴んだ。その手を引きはがされ、私の指をなぞるように、彼のゴツゴツした指が私の指に絡められる。

「マユ」
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