嘘から始まる運命の恋
 大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。覚悟を決めて返信のメッセージを打ち込み始める。

『今朝は黙って帰ってごめんなさい。本当は話さなくちゃいけないことがあったんだけど、言い出せなくて。今度は昼に会いませんか? 美容院の仕事は忙しいと思うので、日時はケイに合わせます。あらかじめ教えてもらえれば、月曜日でも半休を取ればゆっくり話せると思うから』

 それを送信してしばらくすると、ケイから返信があった。

『次の土曜日は休みだから、その日はどう?』

 それに対して、私は時間と場所――会社の近くのカジュアルなイタリアンレストラン――を指定して返信した。ケイからは『わかった。会えるのを楽しみにしてる』と返ってきた。

 彼が会えるのを楽しみにしている相手は、本当は私じゃない。そのことがたまらなく苦しかった。
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