嘘から始まる運命の恋
「嘘でしょっ」

 私はすぐに人混みを掻き分け始めた。

「すみません、通してください、お願いします」

 どうにか人垣の前に出て、店に走り寄ろうとしたけれど、ドアの前にいた制服の巡査に止められた。

「下がってください」
「あの、すみません、この店で人と待ち合わせをしてたんですっ。け、怪我人が出たんですか? まさか、まさか……」

 ケイの身になにかあったんじゃ。

「彼が無事かどうか、教えてくださいっ」
「……お名前は?」
「え、あ、高原真由奈ですっ」

 若い巡査はわずかに眉を寄せた。

「あなたじゃなくて、彼の名前です」
「あ、すみません。長岡ケイ、あ、長岡快です。ここで十一時半に会う約束をしてて、私、電車が遅れて、間に合わなくて。彼、もう来てるはずなんですっ」
「窓際のテーブル席に座っていた三人が搬送されています。そのうちのひとりが長岡快さんです」
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