嘘から始まる運命の恋
 そっとベッドに近づくと、彼の胸が規則的に上下していて、呼吸に合わせて首もとのチョーカーの飾りが小さく揺れている。よくよく見ると、その飾りはシルバーのスカルだ。

 ちょっと意外。

 でも、私が知っているのはバンドをしているときのケイだけだ。普段はこういう格好をしているのかもしれない。今まで見た中で、一番美容師さんっぽいもの。

 壁に立てかけられていた折りたたみ式の椅子を持って来て、ベッドの横で広げた。そこに座って、そっとケイの腕に触れる。

「電車が遅れちゃったの。ごめんなさい」

 ケイは相変わらず静かな寝息を立てている。

「レストランに行ったら、びっくりした。心臓が止まるかと思ったよ。軽トラックが突っ込んでたんだもん。心配したんだよ。ホントにすごく。でも、ひとりでここに寝てるってことは重傷じゃないんだよね?」

 窓から穏やかな午後の光が差し込んでいて、緩くウェーブのかかったケイの髪が輝いて見える。顔色も悪くない。
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