嘘から始まる運命の恋
 きょとんとしていた圭が、心配そうに私の両肩に触れた。

「大丈夫?」

 ショックのあまりおかしくなったと思われたのかもしれない。

「ご、ごめ……あはは、ごめ……ほんと……やだ、おかしい……」

 ひとしきり笑った後、私は人差し指で目もとを拭って立ち上がった。まだまだ笑えそうだけど、いい加減本当のことを言わないと、圭が気の毒だ。

 圭が立ち上がったので、私はショルダーバッグからベージュの革製の名刺入れを取り出し、一枚抜き出して差し出した。

「私、高原真由里の姉の高原真由奈と言います」

 OSK国際特許事務所商標部、と書かれた名刺を受け取り、圭が一度瞬きをした。

「高原……真由奈……さん」
「はい。真由里の一歳年上の姉です。私も同じ理由で、妹に頼まれて快さんと別れ話をするためにライブハウスに行ったんです。だから、私も同罪。あ、圭よりもっと重いかな。だって、私、妹のフリをして、妹の代わりに快さんを振るつもりだったから」
「俺は……じゃあ」
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