嘘から始まる運命の恋
「違うの。そうじゃなくて……」

 そうしてなにやら深刻そうに視線を廊下に落とす。

「真由里?」

 年子の姉妹で、似ていると言われることの多い私たち。ふたりとも背格好も顔のパーツも母親似だ。おそろいの服を着せられ、同じ髪型をさせられていた小さい頃は、双子に間違えられたことさえあった。けれど、性格はかなり違っていて、大学を卒業してからは、お互い性格の延長線上のような仕事に就いた。私は特許事務所で一般事務社員として働いていて、毎日きちっとしたスーツ姿で出勤している。一方の真由里は、二十代の女性向けカジュアルファッションのショップで販売員をしている。普段から、ガーリーな総レースのショート寸ワンピースとか、ショップで売っている商品を着ているし、メイクもそれに合わせて派手だ。おまけにファッション大好きな真由里は、昔から垢抜けていて華があった。だから、よく男性に声をかけられるという話だ。

「どうしたの? なにか困ったことがあるの?」

 私の問いかけに、真由里が心底悩んでいるような表情で答える。

「そうなの。しつこい男に付きまとわれてて」
「えっ、ホント?」
< 8 / 89 >

この作品をシェア

pagetop