嘘から始まる運命の恋
 圭がゆっくりと前髪を掻き上げた。彼の指の間をサラサラと髪が落ちていく。

 そうだ。私が何度も指を通したのは、こんなふうにサラサラと流れる髪だった。

「私も今日、本当のことを言おうと思っていました。そして嘘をついたことを謝って、もしあなたに許してもらえるなら、真由里じゃなく真由奈としてあなたと新しい関係を始めたいと思っていたんです。あなたが快さんじゃなくてよかった。妹の恋人じゃなくてよかった。初めて会ったのに、私、あなたのことが」

 言いかけた私の唇に、圭が人差し指をあてた。

「ストップ。その続きは俺が言いたい」

 私の下唇をすっとなぞって、彼の指が離れた。

「弟の話を聞いて、キミは軽い女なんだと思ってた。でも、ライブの後、キミが帰ろうとするのを見て、あれ、と違和感を覚えたんだ。快楽目当てなら、なにもせずに帰るはずはないって。それでとっさに快のフリをしてしまった……。でも、少し話をして、弟の目は曇ってるんじゃないかって思い始めた。一緒に話しているうちに、つい話に引き込まれて自分のことを話してしまう。そばにいて心が満たされるような感じで……もっと一緒にいたいと思った。ふたりきりでセッションをしたときには、弟の彼女だってことはすっかり忘れていた。キミを帰したくない、もっとそばにいてほしいって……そればっかり思ってた」
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