嘘から始まる運命の恋
 今日のDVDはサスペンスでもかなりホラーの要素が強かった。圭はこういうのが好きなのかな。今度は私の好きなファンタジーのDVDを一緒に見てみよう。元彼はファンタジーは嫌いだったけど、圭はどうかな。

 そう思ったとき、圭に下唇をキュッと噛まれた。

「俺以外のこと、考えてただろ?」
「そ……んなことないよ」

 ちょっとは圭以外のことも考えたけど、ほとんどは圭のことだったもん。体の相性みたいに趣味がすべて最高に合うことはないかもしれないけれど、圭との関係をもっともっと深めていきたいって、思ったんだから。

 その想いを込めて圭を見上げると、彼がわかっているよ、とでも言うように、ニッと笑った。でも、すぐに笑みが消えて、目に強い光が宿る。

 普段は楽器店で接客をしているからか、物腰は丁寧な方なのに、ふたりきりになると意外と独占欲が強い。圭のそんな一面を、この一カ月の付き合いで発見した。

 そしてそんな圭を、私はすごく好きだったりする。
< 88 / 89 >

この作品をシェア

pagetop