裏切るは敵か味方かそれとも、貴方か……
私がまだ10歳だった頃


私の産まれた村は崩壊した。


美しかった安芸の国。その端の小さな村。

家はこの村の長だった。小さくはあったが

父は武士としての誇りをもっていた。

そんな村で私達は

みんなで仲良く暮らしていた。

笑い声が響きあい、いつも明るい村。

そんな村が崩壊した。

ゴウゴウと火が燃え上がり逃げる場所はなくなってしまいそうだった。

腕の中には泣き叫ぶ弟。

母と父はこの村の主として村人を逃したり

助けたりしていた。

私と、弟は先に逃げるように言われた。


「必ず 追いかけるからね。だから先に逃げなさい。いいね。」

そう言って私の手をはなした母の姿。

母を見たのはこれが最後だった。

その日を境に私は、笑わなくなった。

それから3日私は、歩き続けた。

ついた先は長州。

そこで見たのは変わり果てた父の死体。

涙は出なかった。

ただ、父を見て強いものに逆らってはいけないのだと本能的に感じていた。

8歳だった弟は弱々しく泣いていた。

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