プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
「わかった!あたしがキャッチャーやったらいいのね」


あたしたちのいるマウンドに近づいてきた一輝くんから、防具を奪いとろうとすると、敦士がその手をとめた。


「だから、危ないって。
にっしーにやらせるくらいなら、俺がやる」


あれだけ裕貴の球捕るの拒否ってたのに、女のあたしにはやらせれないと。

見た目のわりに男気溢れる敦士に、そんじゃよろしくとキャッチャーのお役目を譲る。


いくらソフト経験者のあたしでも、ブランクもあるうえ、いきなり男のピッチャーの速い球を受ける自信はビミョーだったから、正直助かった。


「一輝くん、......」


敦士が防具をつけてる横で、一輝くんに耳打ちすると、ダーリンはにっこりと笑顔で頷く。

ヘルメットをかぶってバッターボックスに入る一輝くんを見送ってから、敦士は自分も座る前にあたしの方によってきた。


「さっき一輝に何言ったんだよ?
にっしー弟が次に何投げるか、とか?」

「まさか。がんばって、って言っただけ。
あいつが次に何投げるかなんて、分からないもん。
それに、」

「それに?」

「もしあいつの次の球があたしに分かったとしても、一輝くんは聞きたくないんじゃないかな」


マウンドの裕貴を見てから、一輝くんを見つめる。

うん、きっと一輝くんはそういうタイプだ。
最初っから、何投げるか分かってる勝負なんて面白くないって言うに違いない。


そんなあたしを見て、敦士は間違いねぇなと納得したように頷いてから、キャッチャーマスクをかぶり腰をおろした。
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