プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
「いや、......遠慮しとく。
もう球きても反応できねぇし、他のポジションやれる自信ねぇわ。

今の俺にできるのは、渾身のまっすぐをお前のミットに投げることだけだ。

悪いな、一輝。いけるとこまでいかせてくれ」


敦士は荒い息づかいで、首を振り、一輝くんの提案を何の迷いもなく断った。フラフラのくせに、やけにはっきりした口調で。


たしかに、みのるが抜けたいま、代わりがいないから、ピッチャーやめるなら他のポジションに入らなきゃいけない。

だけど、渾身のまっすぐを投げるだけって、それが一番キツいと思うんだけど。


「......分かりました」


「ああ、安心しろ。
この試合が終わるまでは、意地でも倒れねぇから」


何か言いたそうにしていた言葉をのみこみ、敦士に全てを託した一輝くんの肩を叩き、敦士は白い歯を見せた。


「なんかあいつ、死亡フラグみたいなこと言ってなかった?」


マウンドに走っていく敦士の背中を見送ってから、後ろにいるみのるを振り返る。
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