プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
思ったことをそのまま口に出したけど、みのるは下を向いたままで、表情が読めない。


「......高田を見てると、自分が情けなくなる。
もしあの場所にいるのが僕だったら、とっくに逃げだしてるかもしれない。あのときみたいに......」


ようやく試合に興味が出てきたのか、読みかけの本から目を離しグラウンドをみつめる顧問の和澤。

それからあたしとみのるしかいない、三人だけのベンチ。


相手チーム側のにぎやかなブラスバンドの応援が聞こえてくるなか、みのるの静かな声がやけに耳に残る。


「よく分かんないけど、ここまでこれたのはみのるのおかげだからね。みのるは星が丘に必要な存在なの。

次にまた逃げたくなったら教えて。
そのたびに、みのるのこと殴って連れ戻すから」


誰かが塁に出たと報告するたびに一緒に喜ぶみのる、敦士がアウトをひとつとったというたびに立ち上がって喜ぶみのる。

敦士の失敗を望んでいるわけでもないだろうに、なぜか一人で複雑な表情をしているみのるのそばまで近づいて、うつむいているみのるの背中を思いっきり叩いた。


「はは、その時はお願いするよ。
......ありがとう、にっしー」


なんだかよく分かんないけど、ようやく顔を上げて、穏やかな笑みを見せたみのるにほんのすこし安心。


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