プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
何か言おうと口を開きかけた一輝くんを、待ってと制して椅子から立ち上がる。


「一輝くんはさっき謝ってくれたけど、あたしの方が謝らなきゃいけないことがたくさんある」


あたしが弱くなるのは、嫌な人間になっていくのは、一輝くんのせいだと思った。一輝くんがひどいことばかりするからだと、そう思いたかった。

だけど、全部違った。
一輝くんのせいじゃない。


一輝くんは、別れてからもずっと優しくしてくれたし、今まで散々ひどいことをしてきたあたしにもまだ友だちだと言ってくれた。

彼は何も変わらず、あたしの好きになった、純粋で優しい一輝くんのままだったのに。

それなのに、あたしが一輝くんの優しさを全部踏みにじった。


「あたしは一輝くんを責めて、自分が傷つけられたことで一輝くんだけを責めて憎んで、一輝くんの気持ちを思いやる余裕がなかった。一輝くんの言うように、あたしは自分のことしか考えてなかった。

一輝くんは、いい人だよ。

あたしといると一輝くんまで人を傷つけるような、そういう人間になる。あのときの元カレだって、あたしと付き合ってから、おかしくなった」


思い返せば、例の元カレメガネだって、あたしと付き合う前はフツーだったのに、あたしと別れてからストーカー化した。

元カレメガネはいいにしても、一輝くんは別。
純粋な一輝くんまで巻き込んじゃいけなかった。

一輝くんは何も変わらず優しいままだったのに、あたしが一輝くんを振り回すから、一輝くんまでそれに引き込んだ。


「あたしは、男を悪い方向に引きずる」


悪かったのは、一輝くんじゃない。
あたし、だったんだ。


だから、受け入れられない。

本当は、何を犠牲にしても、誰を不幸にしても、一輝くんがほしいけど、なけなしの理性がそうはさせてくれない。
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