プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負

5、うちのエース

GWも終わり、学校が始まった平日の練習後の部室。


「おい、ピッチャーどうすんだよ?
うちピッチャーやれるやついなくね?」


他の部員は帰り、あたしと一輝くんとそれから敦士だけの三人になったとたんに、敦士がそんなことを言い出した。


「高校野球っつうのは、他がヘボくても、すげえピッチャーが一人でもいれば、ある程度のとこまでは勝ち上がっていけるわけ。

俺がセンターかショート守るっつても、他のとこにボコボコに打たれたらおしまいだ。
何を置いても、まずピッチャーいねぇと話になんねぇよ。

まあバッティングは、俺と一輝いればなんとかなるだろ。こう見えても実は俺、中学の時は四番打ってたし、あの銀月館のスカウトもきたぐらいで、」


チャラいTシャツを着て、腕を組みながらどっかりと椅子に座る敦士をちらっと見てから、一輝くんと視線を合わせる。

部員はギリギリ9人集まったものの、肝心のピッチャーがいない。それは大問題。


「でもさぁ、一人のエースにおんぶに抱っこって、かっこわるくない?」

「かっこわるかとです」

「だから、バッティングとショートは任せとけっつってんだろ。つか俺の話最後まで聞けや」


敦士の自慢話に途中で割り込み、二人してかっこわるいと言えば、心外だとでもいうように敦士はこちらをにらむ。
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