絶叫脱出ゲーム~奴隷部屋カラ今スグ逃ゲロ~②
あたしは言いたい気持ちをグッと押し殺し、彩美の手を握って歩き出した。


「朱里、どこに行く気!?」


そう言われあたしは怒りと悲しみを押し殺してほほ笑んだ。


「今日は一日遊ぶんでしょ?」


この街で。


表面上だけの見せかけの街で。


だけどこの街こそが、あたしが生まれ、そして彩美が生まれた場所だ。


あたしは彩美の手を握り、若者に人気のショップが集まる路地へと向かった。


笑いながら、買い物をしながら、あたしは考えていた。


あたしと、優也さん。


2人同時に生き残るのは、不可能だと。


スーツの男から受け取った茶色い封筒。


あの中身は本当にチケットだけだったんだろうか?


あたしは一度も封筒に触れていないから、それすらわからない。


優也さんはあたしに封筒の中身を見せようともしない。


奴隷部屋で感じた優也さんへの違和感の理由が、今朝になってようやくわかった今、優也さんへの疑念が深まるばかりだった。


写真投票の部屋で、優也さんは言葉巧みに夏子さんと昭代さんに写真投票の仕方を説明したのだろう。


全員が助かるから大丈夫だからと。


でも、よく考えてみればあの部屋で全員が助かるなんて不可能なんだ。


あの状況だったから、夏子さんと昭代さんは考える暇もなく優也さんの言葉通りに投票した。


だから、夏子さんはあの部屋で死んだんだ。
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