絶叫脱出ゲーム~奴隷部屋カラ今スグ逃ゲロ~②
公恵が信じてくれるかどうか不安だったが、dashが《mother》でライブをするという情報に目がくらんでいるようで、すんなりと受け入れてくれた。


「優也君ってすごいね!」


「う、うん」


あたしは頷く。


「でね、そのチケットが今一枚だけ手元にあるんだ」


話題の流れが優也さんへと向かわないように、あたしはすぐにチケットを取り出した。


「うそ、これ!?」


公恵の目が輝く。


「うん。これ、よかったら公恵にあげるよ」


そう言い、あたしはチケットを公恵に差し出した。


その指先は小刻みに震えていて、悟られないようにするために必死だった。


「あたしにくれるの!?」


聞きながらも、公恵はあたしの手からチケットを奪い取った。


公恵はチケットをまじまじと見つめ、あたしは緊張から逃げ出したい気持ちになった。


何も書かれていないチケットだ。


きっと、いや絶対に怪しまれる。


でも、その時の言いわけはもう考えてある。


だから大丈夫。
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