距離感
「あの……これ……」


雨に濡れた前髪からしずくをポタポタと落としながら、彼女はあるものを差し出した。


パピコだ。


どこからこのパピコを握り締めて来たのか、パピコは少し溶けかかってるようだった。


「あっ……ありがとう……」


僕はパピコを袋から出し、2つに割ろうとした。


だけど温くなってしまったパピコはなかなか二つに割ることは出来ない。


「あっ……ちょっと待って」


彼女はトートバッグからハサミを取り出して、パピコを2つに割ってくれた。


「二人でね……食べられるものって思って……」


彼女は照れたような仕草でそう言った。


僕は彼女のその仕草がかわいいと思ったし、今まで感じていたことは僕の勘違いだったと悟った。
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