シュールな関係
『あら、また神崎さん一之瀬さんにまとわりついてるわ』
『鬱陶しいわね』
『特別扱いされてると思ってるのかしら』
『彼女は自分が可愛いと思ってるのイラつくわっ』
嫉妬がらみの冷ややかな視線に
皮肉たっぷりの嫌味の陰口、聞こえてるわよ
一之瀬さんだけでなく女子社員も怖い
W攻撃にシクシクする――――
恐怖で胃が…、胸がズキズキと痛いっ!!
朝から変化のない黒い雨雲が漂う中
オフィス街を歩く。
何処に行くのだろう…それすらも聞けない。
先に謝った方がいいのかな?
それとも着いた場所で直ぐにお詫びする…
ああぁ… とにかく今は恐ろしい
怖い・・・逃げたい・・・
怖い・・・逃げたい・・・
その言葉がひたすらわたしの頭の中を交互する。
「おいっ 」
足を止めた一之瀬さんが後ろを振り向く
「ボサ~とすんな早く歩け!!」
コンパスの差だけでなく、5メートル近くも離れている
「…ひゃい」
心音が早くなるのを感じながら
冷淡無情な一之瀬さんの後ろに早歩きで付いていく。
あたしの歩調に合わせることなく
無言のまま数分歩き少し狭い路地を曲がると
一軒の鰻屋ののれんを潜った。
まるで隠れ家のような場所で、高級そうなお店・・・
店内を見渡すと
やはりサラリーマンの姿はない。
「オヤジさん
いつもの二人分お願いな」
わたしの願いも叶わず逃げ場のない通路奥の個室に通される。