シュールな関係
「これはサービスです
良かったら是非飲んで行って下さい」
直ぐに立ち去ろうとしたわたしに
先日は沢山頂きましたので、と小さくウインクして
出されたのはグラスに映える綺麗に泡立つ紅色のカシスソーダー
太っ腹に大和の財布から支払いをし、
おつりはとっといてと大口を叩いたのを思い出す。
このお酒の意味は『あなたは魅力的』って意味ですよ
落ち着くようなバリトン声が優しく耳に堕ちる。
わざわざ作ってくれたので、お礼を言って
一杯頂くことにした。
カシスの甘酸っぱさとシュワ―とした炭酸のソーダーが
口の中で爽やかに弾ける
「美味しい・・・」
素直な言葉が口からこぼれ落ちる
同じカウンターに座っている男がわたしのことを
見つめながらクスッと笑い目を細める。
さっきからずっと横の人に
全身スキャンされてるような気がするんだけど・・・
何も変なトコないよね?
あまりにも視線をヒシヒシと感じてとっても気まずい。
「・・・君、奈緒ちゃんだよね?」
カウンターに一人で座るその男がわたしに声をかけて来た。
「あの・・・どなたですか?」
3席奥のカウンターに座りながらバーボンを飲む男
ショートの髪にねじるように前髪を立たせ、奥二重の目が印象的な
爽やかな22歳ぐらいの男。