シュールな関係
説明を終え、調理場に戻りタイミングを見計らって料理を運ぶ。
いつどんな地雷を踏みつけるか、投げかけれるか分からない
いたって慎重になりながら二人の会話に耳を
ダンボにしながら接客をする。
意外にも話に大きな進展はなく
全く気まずい雰囲気が流れる事もない。
思わず拍子抜けをしてしまうくらいだった。
聞こえてくる範囲では一之瀬さんが営業から
海外事業部に異動すること
今後のアジア進出に向けてのリゾート開発の話
取扱うブランド名やデザイナーの話
そして接待に行ったゴルフなどのたわいのない会話など
ふたりとも特にわたしに触れることもなく食事が進んでいく。
遠目で見る分ではやっぱり一之瀬さんも会長もよく似ている。
見惚れる優美な容姿や体躯だけでなく
やはり同じく只者ではないオーラもそっくり。
だけど本当に ここの家族は凡人にはない人を引きつけたり、
先導する一種の力を持っている。
一之瀬さんの時折見せる笑顔が眩しい。
王族よねぇ
・・・・って見とれる場合じゃないわよね!?
騙されたり、惑わされたらダメ
【魔力】今の彼らに最もふさわしい言葉だ。
そしてその魔力に対抗しきれないわたしがここにいる。
この力から逃れる方法はあるのだろうか?
『経験値積んで強くなるのよ奈緒!』
うん、わたし負けないわっ
意識を引き締め仕事をするわたし。