シュールな関係
ブーーン
携帯の振動を感じ取り出す。
山本からの連絡だ!
すまない、と声を掛け、俺は素早く席を立つと急いで人の少ない場所に移動する。
「雅也様ですか? 山本です
連絡が遅れて申し訳ありません」
「あれから何か進展はあったのか?」
「はい
神崎様は本日会社を退社された様子はありません」
「退社してないだと?」
「はい まだ
私物がデスクに置いております
エントランスを通った形跡もなく、タイムレコーダーの記録もありません。
先ほど私もセキュリティカメラからエントランスを通ったすべての
社員を調べましたが、神崎様の姿はありませんでした」
「解った 俺も直ぐに社に戻る」
森山を急いで見つけると「トラブル発生で社に戻る 後はよろしく頼む」
そう言い残し、急いで店を後にした。
タクシーで社に戻ると、ビルの前で山本が傘をさしながら俺を待っていた。
整った顔に黒縁メガネをかけスッキリと背が高く30代半ば
黒いスーツを着こなし無線電話を取りながら連絡をしている
真っ暗な空からは氷交じりの雨が止むことはなく、さらに音を荒立てて
襲いかかるように傘に打ち付ける。
「雅也さま、お待ちしておりました
どうぞこちらへ」と俺を中に誘導する。
「山本 忙しいのにすまねえな」
「お気遣いありがとうございます
気になることがありましたら何なりとお申し付け下さい」
「それで、神崎は見つかったか?」
「神崎様の件ですが、
女性の警備の者に確認の為に神崎様のロッカーを先ほど開けさせました
私服に着替えられら様子もなく デスクの横に貴重品も携帯電話もあるため
ただ今、警備の者に全館をチェックさせております
直ぐに連絡が入ると思います
暫くお待ちください」
「まだ見つけてないのか!?
一体警備は何をしてるんだ!!」
苛立つ俺とは対照的に山本は沈着冷静に対応する。