シュールな関係
内側から手動でドアを開ける。


「すんげー雨だな横ぶりじゃねぇ~か! 

傘さしてても濡れるな

それに 真っ暗で何も見えやしねぇ」


目を細めながら暗闇をまんべんなく懐中電灯で周りを照らす…



「おい・・・・山本

あそこに影―――――ぼんやり見えるか?


もしかして――――…人…なのか? 」


「雅人さま 傘―――!」


山本の声を遮るように俺は走り出す。


「奈緒か!?」

近寄ると、ハッキリ見える神崎の姿。

雨をしのげる場所もなく、容赦なく横たわる奈緒に降かかっている。


「奈緒 奈緒 聞こえるか!?


しっかりしろ!!おい目を覚ませっ!」
 

大声で何度も奈緒の名前を

呼びかけるが、反応もなく彼女の身体はピクともしない。



「雅也さま 冷静に! どうか、落ち着いて下さい

直ぐに中に移動いたしましょう」



そうだ、俺は何をしてるんだ!?

直ぐに、直ぐに奈緒を運ばないと・・・


先程飲んだアルコールは一瞬にして飛び、

急いで奈緒を抱きかかえてエレベータ―前へ移動する。


ぐったりとした奈緒を抱き寄せる横で山本が冷静に脈拍を測る。


頬の赤身もなく真っ青な顔つきに色のない唇、

全身ずぶ濡れで…まるで息のしていない人形のように見え思わずゾクリとくる。


もうこれ以上、大事なものは失いたくない…

神崎の手を強く握り締めて、山本の診察しているのを待つ。


「神崎様の体温は雨でかなり下がり低体温症になられてます

急ぎましょう」


「大丈夫か? 奈緒、奈緒!!俺の声が聞こえるか!?」

抱きかかえながらも、俺は目を覚まさないのが怖くて何度も何度も奈緒の名前を呼び続けた。


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