シュールな関係
その後の記憶は定かではない。

ロングドレスの裾を膝丈ぐらいに切られ、

彼女達の甲高笑い声と罵声を浴びせられ

「晴人には手を出さないで下さい」と

土下座までさされたまではぼんやりと言われたのは残っている。


あとはどうやってホテルを飛び出してここにいるのかよく分からない。

『もう用はないから出てって頂ける?』って部屋を追い出されたんだっけ?


耐え切れなった記憶は自動的に逃げたすかのように消去を始めている。



12月の夜は肌を刺すように寒く、息をする度にふわーっと白い息がこぼれる


携帯もお金も何もなく、ヒールも足が痛くて抜いて歩いてるうちに

耐え切れず脱いだ。


そのままタクシーに飛び乗れば良かったかもしれないが

所持品は持たずに飛び出したので、

携帯や家の鍵すら持ってない状態ではどうしようもなく

気が付けば公園のベンチに座っていた。


知らない間に、ここで一人いるということはもう誰にも逢いたくない、

係りたくないという自己防衛が働いていたのかもしれない。


実際のところ一筋向こうの道は賑わっていても

この季節の夜の公園は人影すらない。


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