シュールな関係

「あの方は不器用な所があるので

どうか許してあげて下さい



ですが、雅也さまにはお灸をすえる為に

この寒さの中一度、頭を冷やして頂きます」


わたしの心情を察しながらも

眼鏡を中指で上げる顔は一之瀬さんを心配するかけらはなく

かなりストイックな表情に見える。



この寒さの中…放っておくの?

わたしは家にどうやって入ればいいの?


不安げに尋ねると「奈緒様は社長が空港でお待ちですので


このまま直ぐに向かわせて頂きます」と答えが返る。


当初の目的は会長と会うためだった。


でも今このヘビメタファッションで会長と逢えって言うのだろうか!?


その上、靴どころか『フェミニン』と言う言葉がとてもマッチするような

フリルのスウィートピンクのルームシューズ姿


あまりにもミスマッチの常識外れの格好で会長と逢うのは嫌だ。

こんな姿では絶対にイヤ!!


「あのぉ 着替はどこで?」



「手元になければ無理です。


取りに戻れば雅也さまに見つかりますし、時間がありません

このまま直ぐに空港まで向かって頂きます」


ショックで片頭痛に襲われながらもすぐに

山本さんの車に乗り空港に行くと


いきなりパスポートと搭乗券を手渡され行先をみる


「スイス…ランド!? 山本さん…これは…?」



この場に会長の姿はなく、手渡されたものに思わず目が点になる。




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