シュールな関係
軽い静寂の後

先制を切ったのは勿論ながら彼の母上



「奈緒さんの御両親が離婚されたのは

お父様の暴力が原因ですのよね」



「はい 

その頃にちょうどリストラに合い

お酒におぼれて

母に手を上げるようになり

離婚しました」


「お母様も失踪されたとか」

 

「 はい 

母もその後に

蒸発して音信不通です」



「凄い家庭で

お過ごしでしたのね」


飽きれてるかのような

トゲと溜息付のお言葉



「・・・大変なこともありました」


さすがにあの一之瀬さんの母親


鬼の母も鬼だわ

力のあるジャブで痛いところから攻めてくる。




「弟さまは

お父さまの虐待で

右腕を骨折されてるのね」



「・・・はい」

わたしは何よりも晴人のことを

言われるのが一番辛い



いつもわたしを父から庇って守ってくれた晴人。


父が出て行った少し前の日

賭けごとに負けて

酔っぱらって一升瓶片手に暴れて



わたしに殴りかかって来たのを

瓶が砕け割れて出血し、

腕が骨折しながらも守ってくれた晴人





彼の腕には一生消えない傷跡が残っている。



あのときの怖い気持ちが

蘇り手が震える。


息苦しくて俯きながら


一之瀬さんに震えをバレないように


そっと彼の手を離して自分の

膝の上で手を握り締める。



いきなりの責めたてに

心が折れそうだ・・・

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