イヌネコポラリス
黒柴 初音(くろしば はつね)、この名前はもしかしたら日本よりもアメリカでの認知度の方が高いかもしれない。

学生時代から剛腕株トレーダーで有名だった彼は、同時に弁護士の資格を早くに取り、訴訟国アメリカで腕を磨いてきた。

いつもにこにこと笑みを絶やさず女性には紳士的。それでもって気さくさが手伝い、相手に警戒されるという空気を作らせない。

けれど特出すべきなのは年齢や外見ではなく、徹底した情報収集能力と、相手と対峙した時の交渉術にある。

実は非常に優秀なバウンティ(狩猟犬)のような獰猛さを兼ね備えている彼は裁判ではほとんど負けなし。本人が言うには依頼に来た段階で本当に有罪か無罪かが何となくわかるそうだ。

有罪であれば容赦はしない。

情状酌量を求めるクライアントに対して応えるのが弁護士の役割であるにもかかわらず、罪相応の罰を求めるスタイルには当然敵も多い。外側ではなく、守るべき弁護人に対しても。

しかし彼はそんな事は全く意に介さず、相手の罪悪感までもしっかり弁護する。

だからなのか、弁護人に恨みを買う事はあっても、その親族や被害者に対しては非常に印象がいいとも言われている。

無罪の場合は完全に無罪を勝ち取るスタイルもそれに拍車をかけているのか、弁護士としてめきめきと頭角を表した頃には色んな事務所から引っ張りだこだったと聞いた事がある。

それでも日本に本拠地を置いたのは、まだまだ日本の法律が不安定で、それに守られなくてはいけない人権が頼りないと諸外国から言われているのを憂いた結果だとも聞いた事があるが、クライアントの中に外国人や要人も多く含まれているのを見ると、その辺りの信憑性は定かではない。
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